特集―インタビュー― Vol.1 星の村天文台長 大野裕明さん

特集ーインタビュー

Vol.1 星の村天文台長 大野裕明さん

(写真:星の村天文台長の大野裕明さん)

 全国の中でも星がきれいに見えるところにあり、福島県内最大の反射式望遠鏡も設置してある星の村天文台。

今回は、そちらに勤務し、星に情熱を傾ける星の村天文台の「大野さん親子」こと、天文台長の大野裕明さんと副台長の大野智裕さんに、Vol.1とVol.2と2回にわたってお話を伺いました。

 Vol.1では天文台長大野裕明さんへのインタビューを掲載します。

(写真:いつも楽しく宇宙について解説してくれる星の村天文台長大野裕明さん(左)とご子息であり副台長の大野智裕さん(右)。

 

ー星や宇宙に興味を持ったきっかけは?

大野台長小学校5~6年生の時の担任の先生がね、ちょうど理科が専門の先生で、休み時間中に、望遠鏡を使って、太陽を見せてくれたことだね。」と話し出す大野台長。

(写真:太陽の黒点 (撮影:大野裕明さん))

もちろん、望遠鏡で太陽を覗くとあまりのまぶしさで失明の恐れがあるため、先生は天井に太陽を映し出し、太陽の黒点を見せてくれたそうです。

大野台長「私の住んでいる福島市は、夏はとにかく暑くてねぇ。生まれたときから太陽は最大の敵という感じだったんだよね(笑)。それが、望遠鏡を使うと太陽はこんな感じに見えるんだと衝撃的で、今思えばあのときは人生の転換期だったねえ。」と振り返ります。

大野台長「それから、星や宇宙、望遠鏡に興味を持つようになって、中学生のときに、おやじにせがんで(笑)、当時1,000円した組み立て式の望遠鏡を買ってもらって、いろいろな星や月なんかをよく見てたね。」

 そのときのターニングポイントのおかげか、現在は、星の村天文台で特殊フィルターを付けた望遠鏡で、お客様に太陽のプロミネンスや黒点をお見せし、宇宙の不思議や楽しさについてユーモアをまじえて語る大野台長。

(写真 太陽のプロミネンス(撮影:大野裕明さん))

 大野台長のその明るいキャラクターのおかげか、リピーターの方も多く、また、全国放送のラジオなどで星のお話をしていることからか、遠く九州からお越しになったお客様もいたそうです。ちょうど、取材中にも、昨晩のNHKラジオ深夜便を聞いたなんと名古屋のお客様からお問い合わせの電話をいただていました。

 その後、どんどん天文の世界に引き込まれた大野台長は、高校生の時に、福島県郡山市在住の天体写真家であり、「星になったチロ」を執筆した藤井旭氏と知り合うことになったとのこと。40代の方なら小学校時代に読書感想文の課題図書にもなった「星になったチロ」をご存知ではないでしょうか?

大野台長より6歳年上の藤井旭さんは台長にとっては「師匠」であり、なおかつ「兄貴」のような存在で、大野台長がバイクを運転できるようになってからは、片道50kmを郡山までよくバイクで通って星や天体写真についていろいろと教えてもらったそう。

大野台長高校卒業後はね、私の実家が染物屋をやっていたもんでね、その仕事の傍ら、藤井さんらと設立した白河天体観測所のメンバーとして、天文に関わってきたんです。それから、私が20歳の頃は、白河天体観測所のメンバーとして、福島市の浄土平で行われた星まつり「星空への招待」に携わったり、1986年にハレー彗星がやってきたときには白河天体観測所のメンバーと一緒に大きな望遠鏡を抱えて国内外30ヶ所まわり、のべ30万人の人にハレー彗星を見せてまわってきたんだよね。それから、その年の5月には、オーストラリアで日本航空主催のツアーの講師としてハレー彗星をお見せしました。」そのときは、ジャンボジェット機5機分くらいのお客様にお見せしたそうです!

 (写真:オーストラリアから見たハレー彗星(撮影:大野裕明さん))

「ハレー彗星なつかしいですね!私も小学生の頃、ハレー彗星が話題になって、望遠鏡がほしいとねだった記憶があります。結局、買ってもらえなかったですけど(笑)。当時はまだ、滝根町に天文台もできていなかったですし、結局、ハレー彗星は見ないで終わりましたけど(笑)。」

大野台長「当時は、76年ぶりに地球に近づくと話題になっていたんだよね。ただ、最も地球に近づくころは、ハレー彗星は南の方角の低い位置で北半球からはほとんど見られないことから、南半球のオーストラリアに飛んで、みなさんにハレー彗星をお見せしたんだよね。」

当時は、次にハレー彗星が地球に近づくころには生きていないかもしれないということもあり、アマチュア天文家の方たちは彗星を見ようと南半球まで移動するという社会現象にもなったそうです。

大野台長「それから、若い頃は、上野にある国立科学博物館によく通っていて、そこには隕石や恐竜の模型が展示されているんだよね。そこで、隕石博士の村山定男先生と知り合って、隕石についていろいろと教えてもらって、私にとっては、村山先生は師匠のような存在だったんだよね。その影響で隕石から作られた隕星剣を作ってみたり。」

「そうなんですね。星の村天文台に勤務される前から、白河天体観測所などで精力的に天文普及の活動をしてらっしゃったんですね。大野先生は星の村天文台に勤務される前、東京の方でラジオ番組に出演されていたとお聞きしたことがあったんですが…。」

大野台長「そうだね。東京の短波ラジオで、7年間毎回20分間演歌歌手の方と星にかかわるお話をおしゃべりしてました。そんなこともあって、TBSの方とも知り合い、のちに星の村村長となる、当時TBS職員でなおかつ日本人初の宇宙飛行士として話題になった、秋山豊寛さんとも知り合うことになったんだよね。」

「大野先生が星の村天文台長になる際には、秋山さんも大野先生を推したと聞いております。」

大野台長「そうだね。当時、私はラジオ出演のほかに、福島県関係の天文に関する講演なども請け負っていたので、1992年に当時の滝根町町長の蒲生藤湖さんが星の村天文台の台長になる人を県の方に相談した際、県の担当者の方が私を紹介してくれたらしいんだよね。」

「いろいろとお若い頃から、天文業界でご活躍されてらっしゃいますが…、

 星の村天文台で観測していた中で、一番印象に残った天文現象はなんでしょうか?」

大野台長「今から20年前の1997年のヘール・ボップ彗星というほうき星が印象深いかな。あのときは、天文台に一晩で600人のお客様がいらっしゃってとにかくすごかったんだよ。」

「一晩で600人?!すごい人数ですね!」

大野台長「あのときは彗星のしっぽの部分まで肉眼でも見えて、一晩中見えている時期もあって…。あのときはTBSさんも生中継に見えて、それから環境庁官さんもいらしたんだよ。」

大野台長「そのほかには、土星のわっかが15年周期で開いて見えたり、閉じて見えたり、土星のわっかは印象深いね。」

「なるほど。土星の輪っか…。教科書では見たことはあるけれど、実際には望遠鏡で見たことがない方も多いかと思います。肉眼では点にしか見えない土星が、巨大な望遠鏡を使うとちゃんと輪っかのある土星に見えるって、実際に見ると感動しますよね。しかも、土星の傾きは毎年周期的に変わるなんて知らない方も多いかと思います。天文台に来ることによって、実際に見てふれて、いろいろ知ることによって感動する方も多いかと思います。あぶくま洞などの観光の帰りなど夜間公開に気軽に立ち寄っていただけるとうれしいですね。」

ー「話は変わりますが、長年、大野先生は星の村天文台に勤務されてきましたが、

3.11東日本大震災のときにこちらの天文台も大きな被害を受けたとお聞きしましたが…。」

大野台長「あのときは職員4人で1階の事務所にいました。ただ、私は大地震が起きる直前まで太陽のプロミネンスで大きいものがでていて、巨大な望遠鏡のある天文台3階にいたんですよ。今考えるとゾッとしますが。とにかく大地震が起きて望遠鏡はどうなったか心配で天文台へ上がってみたら、なんと5トンもある望遠鏡が天文台の床を突き破って落ちていたんですよ。」

(写真:東日本大震災で床を突き破って落ちた望遠鏡。床に望遠鏡がめり込んでいる様子がよくわかる。)

大野台長「もうあのときは、この天文台は閉鎖するしかないのかと愕然としました。でもね、天文の仲間たちからぜひ再開してほしいとご支援いただいて、いろいろな方たちのおかげで新しい望遠鏡が入ることになったんです。」

「その望遠鏡がこの「絆望遠鏡」なんですね。」

(写真 震災後、新しく導入された「絆望遠鏡」)

大野台長 「多くの人たちの支えによって再オープンできて、人と人とのつながりを改めて感じたことと、また、天文台がこれからも宇宙とのつながりになってほしい、また震災復興のシンボルになってほしいという願いから、望遠鏡に「絆」という名前を入れさせてもらいました。」

「震災から7年目の夏を迎えますが、あのときは震災から1年数か月ぶりに再オープンということで感慨深かったですよね。この新しい絆望遠鏡で今後もさらにお客様にきれいな星をどんどんお見せいただきたいですね。」

 

ー「今年度、注目の天文現象は何でしょうか?」

大野台長「今年度は土星の環が一番開いている時期で、土星のわっかが見ごろになりますね。それから、8月中旬のペルセウス座流星群、11月のオリオン座流星群、12月のふたご座流星群が期待される流星群になります。あと、夏から秋にかけては天の川が見ごろになります。」

星の村天文台は環境省主催の全国星空継続観察(スターウォッチング・ネットワーク)でも全国で上位になったこともあるくらい、夜空が暗く星がきれいに見えるそうですね。私も何度か天文台でうっすらと雲のようなモヤのような天の川を見たことがあります。満点の星空に架かる天の川、ほんとにきれいですよね。」

大野台長 「もちろん、月明りがない、天候などの条件もありますが、ぜひみなさんにお見せしたいですね。」

ー「大野先生、今後の抱負をお聞かせください。」 

大野台長「とにかく、健康で元気でいて、みなさんにきれいな星を伝授したいですね。それから、できるだけ、この福島県内最大の巨大な望遠鏡で、どんどん美しい星の写真を撮って、みなさんにお見せしたいなと考えています。」

「どんどん天文ファンの方が増えていくといいですね。今日はありがとうございました。」

まだまだ、大野先生の天文話は尽きそうにありませんが、ぜひ、続きは星の村天文台夜間公開などでお聞きください☆もちろん、昼間の望遠鏡見学ツアーで条件が良ければ、太陽の黒点やプロミネンスも特殊フィルター搭載の望遠鏡で見ることができますので、ぜひ、あぶくま洞などお近くにお越しの際にはお立ち寄りください。詳しい公開時間などについては、星の村天文台までお問合せください。

(2017年7月取材)

 

星の村天文台(田村市)ホームページ http://www.city.tamura.lg.jp/soshiki/20

大野台長の世界のオーロラの写真なども展示される「南極のオーロラと宇宙展」開催!

👉 http://takinekanko.jp/archives/403

星のおおのさま(大野台長のホームページ)

👉 http://hoshinomura.sakura.ne.jp

 

 

 

 

 

 

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